クリニックの運動室内には壁の棚があっていくつかの靴を飾ってあります。

「これが靴の見本なんですか?」

みらいクリニックで靴をお渡ししていることをご存じの方からそう聞かれました。

「いやいやこれはそれほどでもない靴の見本なんですよ」

「???」

みらいクリニックで靴を作った方は、それまで履いておられた靴が怖くて履けなくなった、痛くて履けない、体調が悪くなったなどなどの理由で履けなくなることがあります。

「もう今までの靴はいらないんだけど・・・」

「じゃあ下さい。勉強します」

と、どうせ捨てるならと、持ってきていただきます。

これらを分解して、私たちの知識向上のために最後の仕事をしてもらいます。

「これらの靴はこれまでの靴が履けなくなったといって持ってこられたものなんですよ」

決して悪い靴ではないのですが、それ以上のものを知るとどうしても戻れなくなってしまいます。

「え〜〜〜私なんかこの靴メーカーのを10足以上持ってるのに・・・」

と嘆く方もいらっしゃいました。

「いやいや決して悪い靴じゃないんです。値段もそれなりですし、ただ最高かと言われると?」

「まあそうですねえ・・・」
陳列棚?


こちらがその棚です。

下段にいろいろな靴がおいてあります。

もちろんモザイク処理済みです。




様々な知識が必要になってきますから、私たちも真剣な方以外にはお話ししません。うちはクリニックであって、販売所ではないですから、むやみに勧めることも押しつけることもしません。どうしても、というときには細かく説明して納得していただいた上でお勧めしています。

私の師匠の一人である、池畑診療所の池畑先生はいつも仰っていました。

「本物を知ることだ。本物を知れば偽物はすぐに分かる。偽物ばかりを見ていては、本物は分からない」

池畑先生の近くで勉強させていただき、本物を見ることを徹底的に教えられました。あんなもの、こんなもの。先生の理解には遠く及びませんが、本物を知れと教えられたことは私の一番の宝物です。

一度本物の靴を知ってしまうと、それまでのものが色あせてしまいます。靴だけではなく、靴下にもこだわり、生活にこだわり、そこから本物が生まれてきます。

運動室の陳列棚は、本物を知った方々の置き土産です。