「私、坐骨だからもう治らないんですよね」

と治療中に言われることが結構あります。もちろんその人が”坐骨”な訳じゃなくて、坐骨神経痛ということですね。 

猫も杓子も坐骨、坐骨という言葉を使うのでどれだけ言葉の安売りと思いますが、ところで坐骨神経痛って何でしょうか。

患者さんに聞いても「そういわれました」あるいは「自己診断です」というだけではっきりしません。そりゃそうだ。

整形外科で、鍼灸で、整骨で、整体で、いろいろなところで坐骨神経痛という言葉が一人歩きしています。

良くならない腰痛の免罪符のように。

坐骨神経痛は症状の一つであるので、病名としてそのものを見ることはまずありません。

まだ若いとき(今でも充分若いですが)、回診中に腰が痛いという患者さんがいて上級医師がちょこちょこと診察をして

「これは坐骨神経痛だね」

と診断を下しました。当然側にいた下級医師は

「どうやって診断するんですか」

と尋ねましたが、答えは「・・・(無視)」

結局本人も何が坐骨神経痛なのか全く分かっていなかったんですね。知らないと言えないことは怖いです。

本当に坐骨神経が痛いのか、坐骨のあたりが痛いのかはっきりとしないことも多く、みなさんどのようにして坐骨神経痛を診断しているのかなあといつも不思議です。

もちろん私は、そのような診断を下すことはありませんが。

坐骨神経痛と言われているものでも、仙腸関節炎や足指の変形から来るものも多く、「一生治らないんでしょ」といわれても「そんなこと無いですよ」と答えるようにしています。