30代女性Uさん。

もう数年前の話。みらクリを開業してすぐの頃だった。当時は、まだ山口市で非常勤の外来もしていた。Uさんは、慢性頭痛で来院していた。 
もうすでに、20年以上悩まされ続けていて、大学病院をはじめとして近隣の医療機関は受診し尽くした。

受診した科も多岐にわたる。紹介に紹介を重ねてのことだからだ。

あきらめ半分で、私の外来を訪れた。

幸にして、私の治療は、これまで施された治療にはどれも当てはまらなかった。

私は、それほど困難無くして治癒するだろうと、初診時には踏んでいた。

ところが、一月経っても、半年経っても、いっこうに良くなる気配がない。

Uさんは、鼻炎、鼻閉があったため、あいうべ体操ももちろん平行してやっていた。他院で、副鼻腔炎の治療を受けたこともあった。


(すぐに治るだろう)


と治療を始めたものの

「変わりません・・・」

という声を聞くたびに、頭を悩ませたものだった。

当時の考えつく治療は、総てやった。時には、何時間も話期を聞いて、何か手がかりはないだろうかと探した。

それでも、頭痛、鼻閉は続いた。

そして、治らないまま

「私の力では無理だった。本当にごめんなさい」

といって、診療を終えた。

今ふと考える、Uさんも鼻咽腔炎だったのだろうと。その当時は、鼻咽腔という概念さえも知らず、鼻閉を治して、副鼻腔をきれいにすることくらいしか無かった。

歯科領域も炎症巣を探したのだが、これと言って見つけられなかった(当時の知識なので、いまならまた別の歯科に紹介したと思う)。

今であれば、Bスポット治療や塩化亜鉛の点鼻といったものを提供できる。

もちろん、これで治るかどうかは不明だけれど。

全ての患者さんを治せるわけではない

患者さんは、ともかくとして、私はそう理解しているけれど、やはり自分を頼りにしてきてくれた方は、治って欲しいものだ。

自分の力量のなさ故に治せなかった患者さんはいつまでも覚えている。

そして、思い出しては、いまだったらどういう治療が出来るのだろうかと呻吟する。


「今は良い薬が出来たから」

なんてことではなく、自分の知識、技術の低さ故に治癒に至らなかった患者さんに対して、どのようにフォローしていけばいいのだろうか。

雑誌やテレビなどのマスメディアを通じて、イマイは元気ですよ、今はこのような治療をしていますよ、昔の私はダメだったけど、このようなことをやってみてはどうですか?

というお知らせにもなるのかなと思っている。

もちろん当時も伝えましたよ”あいうべ〜”を
でもそれだけじゃダメなこともある・・・