歌手をアーティストと表現するようになったのはいつからだろう。

亡くなった本田美奈子さんが、

「アイドルではなくて、アーティストとして活動したい」

と言って干されたのを覚えている(いつの話だ?) 
それまでの活動が記録されるというのは、本人にとってつらいものだ。

人は、生きている間成長していくので、昨日の自分より今日の自分の方が 、(おそらく)成長しているだろう。

この小さな積み重ねが大きな違いとなって現れてくる。

 10年前に表現した内容は、今の”成長した”自分からするとなかなかつらいものがある。

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「先生に、B病院の時に診察してもらいました」

これほど恥ずかしいことはない。知識も経験もなく、何とかしたいという”思い”だけで診療をしていた頃のこと。

アトピー性皮膚炎で受診されたとのこと。

担当医でなかったせいか、思い出せない。

しかし、私がそのとき入院していたこと(急性扁桃炎)、結婚するという話が漏れ伝わってきたことなどを知っておられた。

私は、食養担当だったので、いろいろ食事についてお話はしていたらしい。

「その時、鍼をしたら治るよ、といわれました」

と。

「えっ私がそんなことを言いましたか?鍼で治るって??」

「はい、鍼でよくなるよって」

「・・・・」

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いまでは、鍼を使うことなどないのだが、当時は、いわゆる東洋医学一辺倒だったので、鍼灸も積極的にやっていたのだ。

しかし、ツボの位置や経絡を覚えるのが面倒で、挫折してしまった。

そうか、その頃はそんなことで治るなんて言っていたのだなあ、と自分の知識の浅さに恥じ入ってしまった。

鍼では治らないというわけではなく、もっと楽に治る方法があるので、そちらを選択していると言うだけなのでご注意なきよう。 

 その頃は、口のことなど考えもしなかった。毎日、毎日、患者さんのベロの状態、様子は観察していたのに、そこで止まってしまっていたのだ。

そこから先に少し進むだけで、大きなヒントが転がっていたのに。

ただ、私は、結果を重要視して、手段を選ばなかった。そしてもっとラクに治療できる手段を知ることが出来た。

これも、一所懸命に針などの治療にも取り組んだおかげだろう。

それによって、その治療の良し悪しを知ることが出来たのだから。

10年もしたら

「えっ口のことなんか言っていましたか??」

となる?ならない??

 アーティストは、何十年も前の作品が残るのだから、それが今の自分だと思われるとつらいものがある。

そのように話す人も多い。

私はアーティストではないが、数々の患者さん方から学ばせていただいて、医者として成長してきたので、昔の稚拙な(そして今も)状態から抜け出すために、一日一日努力を続けることしかできない。

10年前の

「鍼で治りますよ」

と言っていた自分に、今あえるとしたらどのような言葉を投げかけるのだろうか。

そして、どのような言葉が返ってくるのだろうか。