漢方薬のツムラでは、栃木の工場が被災して、主力漢方薬が作れなくなっているとのこと。

だから、長期処方を控えて欲しい旨のお知らせが来た。

もう一つの工場は静岡にあるらしいので、こちらも地震が来たら大変だ。

いつも言っているように漢方薬といえども、乱用せず、出来るだけ使わない方がいいのだ。資源保護!

西洋医学も、東洋医学も、外来でやっていることは同じ。”処方”だ。

結局何かを体の中に入れて、作用を期待するという点では同じだ。


ところで、漢方薬のメリットを紹介するときに、処方が少なくて済むということがある。

たとえば、腰が痛い、冷える、おしっこが近い、眼が遠いなどの症状は、それぞれに処方薬が違うが、漢方だと”八味地黄丸”という薬剤一つでまかなえることがあるからだ。

八味地黄丸も、その名の通り八つの生薬が含まれているし、生薬内のここの成分も数多くある。 そうすると、含まれる”薬”の量は膨大になるはずだ。

だから、処方が少ないから良いというロジックはおかしい。

そんなにも”「薬”が多い漢方薬であるが、受診する患者さんの中には、それを4種類も5種類も処方されている人がいる。

合方と言って、二種類以上の漢方薬を組み合わせることも珍しくはないが、各々に関連する処方だ。 

出来るだけ少ない薬(限りある資源)で、身体に良い変化を起こすという試行錯誤を繰り返して、金匱要略なり、傷寒論なりできあがったのだろうから、何でもかんでも症状があれば加えていけばいいというのは、まったくその意に反している。

漢方の初心者であれば、病名処方も仕方のないことであろうが、漢方専門を謳っている医者でもそうであるのだから困る。

それだけ処方が膨らんでくるのには色々な理由があるであろう。ただ、そうなってくると「投与する薬剤が少ない」とか「結果的に経済的である」という従来の漢方の利点が消え去ってしまうことにある。

漢方が周知されてきたのは大変喜ばしいことだが、やはり「処方する」という範疇から抜け出せていない気がする。

薬だけに焦点が当たり、体の使い方がなおざりになっている感が否めない。今回の震災にあたり、その辺がとても心配になった。