時々、「昔、治療をしてもらっていました」とか、「同じ病院で働いていました」なんてことを言ってくださる方が来院される。

昔の治療のことを言われると、赤面ものであるが、何とかして良くしたい、という思いだけは変わっていないと思う。
あの時のあの患者さんにこのことを伝えていることが出来れば・・・

あの人に、このことをしてあげていたら・・・ 

自分の知識のなさ故に、治療がうまく行かなかった・・・


こんな後悔にも近い思いを抱きながら殆ど全ての医療者は、今も仕事に精を出しているのではないだろうか。もちろん、私にもそんなことが一杯ある。

では、その患者さん達に今私が出来ることはなんだろうか。

難しい患者さんがいたからこそ、今の私の考えがあるのであって、私の考えが先行していたわけではない。病気の人が、先生だったのだ。

その先生達にどうやって恩返しが出来るのだろうか。そればかり考えるのである。

そのためには、今私はこうやって治療をしている。昔は、あなたに伝えることが出来なかった。もっとラクに治ることが出来る方法がある。ぜひ知って欲しい、と声高に叫ぶことくらいしかできない。

それでどうなる、なんてことは思わないが。もしかしたら、その声が届くかもしれない、僅かな期待を込めて叫ぶ。

そうしないと、教えてもらった恩を返せない。

自分の未熟さを恨むばかりである。