心理学者のダニエルカーネマンが2002年にノーベル”経済学賞”を受賞してから、グンとプロスペクト理論に関する書籍が増えましたね。

私も数冊読んでみましたが、これはおもしろい。

EBM(証拠に基づく医療)もNBM(物語に基づく医療)も大切ですが、実際の臨床の現場ではNBMの方が役割としては大きいです。

NBMは、私が大学つとめの頃だから10年くらい前に、EBMに対する考えとして始まってきた記憶があります。

プロスペクト理論は、このEBMに大きな力を発揮することでしょう。

そこで紹介する本を数冊。


京都大学の医学部生が4割受けるという講義を持っているこの著者。コラムニストの中野翠さんなんかは酷評ですが、私はおもしろいと思う。こんな話は京大生が聞いてはいけない。地方駅弁医者の出る幕がなくなってしまうわけです。


そして、こちらは東大工学部→NHKアナウンサー→北里大学医学部という異色の吉田先生の本。
なるほど〜〜こういう思考しているのかと感心します。
タイトルは大袈裟で、中身はプロスペクト理論、そしてヒューリスティックについて。


最後は、この方。こちらもプロスペクト理論に関してコンパクトにまとめてあります。東大医学部の先生らしい。
著者の知識はかなりの量と推察されます。上げてある参考図書は、私もほとんど読んでおりました。

ただ、この方まだ若いし、これからでしょうね。文章から知性はあふれますが、たとえば経営者として実践を積んできたという重みは感じられません。30代??でしょうか。大学を飛び出して、実業してみればさらに言葉が深くなると思われます。

しかし、最後の方でジョンゴットマン博士まで出てくるのには驚きました。私が言うのも何ですが、よく勉強しておられる。ゴットマン博士、夫婦の会話を数分聞くだけで、8割以上の確率で離婚するかどうか分かるという実力(?)の持ち主です。



ただ、吉田先生の方がやはり年の功を感じます。こればかりは仕方ないですね。

 この様な本を、医学部生でも、研修医でも読んでおくとずいぶんと日本の医療は変わっていくと思います。

学生だと、講義などで教えられることもあるのかもしれませんが、いったん現場に出てしまうとなかなか学ぶ機会がありません。

最初に上げた本の中で、カーネマン教授が同僚で一緒にノーベル経済学賞を受賞するはずだった故トベルスキー教授について、本当に親しく語っているのがもの悲しさを誘います。

この様な人生の友に出会えるのは、ノーベル賞をもらうよりも難しいのかもしれません。 読んでいてとてもうらやましかったですね。

後の新書3冊、これを東大、京大の学生に読んでもらって日本をもっと活性化していただきたい、と切に願うばかりです。