第二回日本病巣疾患研究会総会が9月14日(日) 中央区日本橋の八重洲ホールにて行われます。

総会に先立って、堀田修会長(堀田修クリニック院長)の挨拶文を掲載いたします。

心のこもった文章をぜひお読みいただきたく存じます。 
研究会総会のご参加は、
こちらから。一般演題も募集しています。 

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ご挨拶

 

戦後70年、わが国の医療は米国を追従するかたちで細分化を進めて来ました。それが多くの科学的進歩をもたらしたのは紛れもない事実であり、臨床応用研究の段階に突入したiPS細胞は細分化型医学が生んだ日本が誇る研究成果の象徴と言えましょう。また、今年、大きな話題となったSTAP騒動の注目度の高さはこの分野に対する国民の大きな期待を反映しています。

 しかし、医療全体を俯瞰すると日本人の死因の上位を占める悪性新生物、心疾患、脳血管疾患において過去二十年間減少傾向はなく、進行とともに深刻な結果を招く慢性腎臓病、糖尿病などの慢性疾患、社会問題となっている鬱や認知症、あるいは炎症性腸疾患、関節リウマチなどの慢性免疫病はむしろ増加をしています。その背景には細分化型あるいは分析型医療の限界があるように思えます。

特定の遺伝子や蛋白の異常により生じる疾患はごく一部の稀少疾患で、頻度の高い慢性疾患のほとんどが多数の複合因子が絡んで発症し、進行して行きます。細分化型・分析型医療の推進は新薬開発に寄与し、これまで優れた多くの対症治療薬を生んで来ましたが、残念ながら根本治療の開発にはつながっていません。根本治療のない対症治療一辺倒の医療は医療費の増加にはつながっても患者数の減少をもたらすことはありません。

 多くの慢性疾患の背景にあるのは生体の調節系の乱れです。そして、免疫系と自律神経系が調節系の二本の柱で、この二つを軸とした調節系医療はこれまでの細分化型・分析型医療の欠陥を補う医療として今後発展する可能性があると考えます。「扁桃」と「歯」に「上咽頭」を加えた口腔・咽頭部位の慢性炎症は免疫系・自律神経系の乱れを引き起こす原病巣となりますので、「病巣疾患」という考え方はまさに調節系医療に直結します。本研究会では医科と歯科が連携して口腔・咽頭領域の病巣炎症が引き起こす諸疾患に取り組むことを重要な課題としています。

 「扁桃病巣疾患」「歯性病巣疾患」に比べ、慢性上咽頭炎ならびに慢性上咽頭炎が関連する二次疾患は認知度の低い分野です。今回の第二回日本病巣疾患研究会では内視鏡を用いた慢性上咽頭炎治療に実績のある田中亜矢樹先生(大阪府開業)に映像を交えて慢性上咽頭炎がどのような病態であるかについてご講演頂き、慢性上咽頭炎治療(Bスポット治療)に57年間携われ、現在、同治療の改良と普及活動を精力的に行われている谷俊治東京学芸大名誉教授にBスポット治療の実演を行っていただきます。

 歯科からは、ぺリオ(歯周病)を中心とした歯性病巣疾患に早くから気づき、30年以上にわたり実践されてきた口腔ケアの第一人者 米山武義先生(静岡県開業)にお話しいただきます。

 また、上咽頭に関する基礎的研究発表を内田貴大先生(防衛医大腎臓内科)より行っていただく予定です。

 さらにこれまでの歴史を振り返り、未来の病巣疾患研究・臨床の礎にすべく、半世紀にわたり扁桃病巣疾患のトップリーダーとして我が国の扁桃研究を牽引された形浦昭克札幌医大名誉教授にご参加いただき、谷先生とともに「鼎談:病巣感染・温故創新」を今回の特別企画として予定しました。

 通常の対症治療と異なり、病巣疾患の診療においては患者さんひとり一人に対して「木も見て森も見る」視点を持った丁寧な観察が不可欠です。この点において本研究会では症例毎の掘り下げた検討が大変重要であると考えており、症例報告の口演発表を予定しています。

 

 皆様の活発な参画により実り多い研究会にしたいと願っております。奮ってご参加ください。

 

日本病巣疾患研究会 会長

堀田 修

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堀田修会長は、世界で初めて不治の病と言われたIgA腎症を完治させたその人です。

そこ難病の治癒には、病巣疾患という歴史に埋もれた概念を引っ張ってくる必要がありました。

難病と言われても諦めないで下さい、必ず原因があるはずです。

その原因(原病巣)を探っていくのが、医科歯科連携に本気で取り組んでいる日本病巣疾患研究会だと自負しています。

どうぞよろしくお願いいたします。

今井一彰