「遠方で通うことが出来ないので、あいうべで●●の病気は治るか教えて下さい」
「この病気は、そちらへ通うと治りますか」
「私の病気に対する意見述べて下さい(用紙に書いて送れ)」

という問い合わせをもらうことがあります。

答えは一つ「わかりません」です。これしかありませんよ。
診てないのに、、、、
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Yさんは、山伏が使うような大きな杖をついて足を引きずりながらみらいクリニックの受付に入ってきました。

なんとかして杖なしで歩きたい

聞くと、高速バスで何時間もかけて早朝からその不自由な体を押して受診したと言います。

若年性リウマチを患い、変形した股関節には人工関節を入れる手術もしました。

まだ30代。

どうして、こんなに苦しまなきゃいけないのだろう。彼女が何の悪いことをしたのだろう。
医者として彼女に何をしてあげられるのだろう。


 わずかな距離を歩くだけでも、足の甲を引きずるような形になってしまい、靴は3ヶ月も持ちません。靴底じゃなくて、靴の尖端がすり切れてしまって穴があいてしまうからです。

博多まで長距離バスで来るのもすこしでも節約したいから。

早朝に出発して、診察後はそのままとんぼ返りすると言います。

もちろんそれまでにいろんな病院を受診しました。

どこでも言われることは同じです。

「どうにも出来ません」
「何とかしてあげたいけど、、、、」

みらいクリニックのフットケアセンターのことを聞いて「ひょっとしてここなら杖無しで歩けるようになるかも知れない」と直感し受診してきたのが、2年前の一月でした。

「良くなるかどうか分からないけれど、私たちの持てる知識、技術を総動員するからとにかくやってみましょう」

と、こちらも全く自信が無いまま治療、指導をしました。

受診は半年ごと。

その年の7月にはすこし歩行距離が伸びました。

ゆびのばソックス、ドクターシューズはもちろん常に愛用しています。

そして、不器用ながらも「ひろのば体操」も。でもまだ杖を手放せません。

「次は一年後ね」

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ちょうど一年後Yさんが3回目の受診をしました。

「あれ〜〜っ今日は杖をついてないね、どうしたの?」
「とても歩きやすくなってきたんです」
「ちょっと歩いてみてよ」

関節の変形が改善するわけじゃありませんが、足を全く引きずること無く、遠目には普通に歩けているように見えます。

脚長差は5cmほどありますから、普通の歩行というわけにはいきませんが、杖をつかず、シッカリとした足取りです。

もちろんこの日も長距離バスに長い間揺られて受診していました。

「すっごい良くなったよね。頑張ったね!!」
「職場を変わって、体に負担が少なくなったのも良かったと思います」
「死ぬことはさけられない、僕にもどうしようも出来ないけど、それ以外はやっぱり諦めちゃいけないね」
「ここに来るとなんだか勇気が出てくるんです。いつも励まされるから」
「いや〜〜それは私が自分自身に言い聞かせているんだよ。あなたがこうやって遠くから頑張って受診しているんだから、私たちもそれに絶対に応えなきゃいけないって」

Yさんの荷物はキャリアバッグのみになりました。靴も3ヶ月でダメになるなんて事はありません。その証拠に2年前につくったドクターシューズはまだまだ健在。シッカリ履けます。

こんな方を通して私たちも多くを学ばせてもらいます。

「どこに行ってもダメだ、治らない、とし言われなかったので、 みらクリで「頑張って治そう」って言われたときは本当に嬉しかったんです」

私は、心で泣いた。ウレシイ言葉です(T_T)

あいうべ体操を考え出したのも、リウマチの方を何とかして良くしたいと思ったから。

どうして、こんなに苦しまなきゃいけないのだろう。彼女が何の悪いことをしたのだろう。
医者として彼女に何をしてあげられるのだろう。

残念ながら実生活で努力したことが報われることはほとんどありません。「努力は実る」は半分、いや半分以上ウソですね。実らない、報われないことの方が多い。 

でも努力をしなければ、けっして報われない、実らないでしょう。

出来るかどうか分からないけれど、まずはやってみる。とりあえず取り組んでみる。

上手くいくかどうかは分からない、でもやらなきゃ始まらない。

だからこの文章の冒頭の質問の答えは「わからない」しか無い。あいうべ体操をやっても失うものは無いのだから(無料だし)、まずやってみるという姿勢は大切。

それを「●●は治りますか」って、見たこともない人から聞かれても「分かりません」としか応えられません。

冷たく聞こえるかも知れないけれど。

Yさんのように遠くからでも歯を食いしばって、何とかなりたい一心で受診してくださっている目の前の人に、私は自分の人生の時間を使いたい。 

情報だけをもらおうという人とは時間を共有しなくてもいい。 なんだ偉そうに、と思われてもいい。

Yさんのような方のために私は自分の時間を使いたい。

生きていれば何か変化が起こるかも知れない。だから死ぬこと以外は諦めない。

Yさんの努力、姿を見て改めて心に誓いました。
 そして、口呼吸の人を一人でも減らして病気予防をしていきたいとも。


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